認知症に限らず、高齢者の直接の死因で最も多いのは肺炎です。口から食べるという事は、誤嚥性肺炎による死亡を防ぐ意味においても非常に重要だと言えます。噛む・飲み込むという機能を維持する事で、誤嚥が起こりにくくなるからです。また、認知症が進み、胃ろうや点滴で栄養を補給するようになると、新な問題が起こります。口から食事をしなければ口の中は汚れないと思われがちですが、実は逆です。口からまったく食べられないという事は、口腔内の細菌叢が変化し、肺炎の原因菌が増えてしまうという事が細菌の研究で分かってきたのです。多少でも口から食べられる方がむしろ口の中の菌は正常な状態を維持できるのです。口から食べるという事は、寿命を支える上で最も基本的な事だと言えるでしょう。腸管の変化に着目すると、点滴で栄養を補給するようになると腸での消化吸収が不要になります。腸には全身の7~8割にも及ぶ免疫細胞が集まっているのですが、使われなくなった腸管壁は薄くなる為、免疫細胞は著しく減少してしまいます。口から物を食べるという行為は、全身の免疫機能を守る事にも繋がるという事を忘れないで頂きたいものです。